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空きっ腹にたましい

ほくたん はつたにむい

たたかう話

短歌! 一首評

あなたにはたどり着けない ただじっと愛するという攻撃もある

(大森琴世)「京大短歌20号」

 

とってもやばい歌だ。愛???

世の中、たどり着けないものばかりだ。当たり前だ。頭のよさや要領、自分の見た目、いろんなものにいやになって、でもなんとか自分とうまくやっていかなければならない。その中で、とくに人に対する感情は、強くて、どうにもならなくてとてもしんどい。

困った。あなたはとってもすごい。わたしの何倍も何倍もたくさんのことを知っていて、それに得意げになったりもしない。本質的なやさしさなんかも持っている。許すのがとても上手だ。感情が上手だ。わたしの感情はどうしようもない。ださい。あなたはわたしと戦っていない。勝てない。対等にはきっとずっと、なれない。みじめな気持ちになる。あなたのことが好きで泣いているのか悔しくて泣いているのかわからない。わたしは泣いているのか。泣いているのをあなたが知ったらきっと困った顔をするのだろうな。勝てない。ぜったいぜったいぜったい勝てない!!!!!

愛するという攻撃、とはなんだろうか。

愛は基本的には自らの中にあるもので、それは正しく使えば他者を傷つけるものではない。たまに、その使い方をまちがえてしまうこともあるけれど、この歌の攻撃、はそのような意味ではないように思う。どうしてもたどり着けないなら、あなたを自分と同じ位置まで落としてしまえばいい。それができるのが愛である、と主体は考えている。あなたはすごい。最高だ。絶対に勝てない。でも、あなたを愛することがあなたにはたらきかけて、あなたがだめになればいい。それはあなたの価値を貶めない。あなたの内面をすこしずつ熟していきたい。わたしはなんにもできないけれど、あなたがわたしなしでは生きていけないようになればいいな。そのとき、愛することはかがやく刃に代わる。脳天に突き刺さるその刃はよく晴れた昼、反射してよくまたたくのだろう。わたしたちはだめになっていこうね。愛にとけた死体、想像上のそれは熟しすぎたスイカのようなにおいがしている。